Newton 2024年8月号
うるう秒の廃止が決定した
さまざまな社会システムをコンピューターが支えるようになると,うるう秒を挿入することで,社会に混乱が生じるようになった。あらゆるシステムでうるう秒の挿入を正しく認識・処理するというのはきわめて困難だからだ。また,うるう秒の挿入自体も,決定は半年前で,しかも,定期的に実施するものでもないため,その都度,人手を介して対応しなければいけない。
2012年7月に実施されたうるう秒の挿入のときは,SNSなどのインターネットを活用したサービスに障害が発生した。社会生活の基盤となるコンピューターシステムに障害が発生すると,社会全体に混乱が広がってしまう。
一方で,近年はむしろ自転速度が加速しており,協定世界時から1秒を削除する「負のうるう秒」が必要になるという見解もある。実際,2022年6月29日は,“観測史上最も短い1日” だったという。この傾向がつづけば,1日が24時間よりも短くなり,負のうるう秒が必要になるかもしれない。負のうるう秒を実施することで,想定外のシステム障害が発生するリスクもある。ただし,自転速度の加速化の原因や長期的な傾向かという点は議論がつづいている(下のグラフ)。
2018年から2023年末までの地球の1日の長さの変動をグラフにしたもの。縦軸は,地球の自転をもとにした1日の長さと8万6400秒の差分をあらわしている。その差がプラスだと,24時間よりもわずかに1日が長かったことを意味する。2018年後半以降,この差がマイナスになる傾向にあったことが見てとれる。これは1日の長さが24時間よりもわずかに短くなる傾向にあったということだ。2023年ごろからはふたたび長くなりつつあり,2024年現在は8万6400秒ちょうど前後を推移している。
以前から,大手IT企業などを中心に,うるう秒の廃止を求める声は高まっていた。このような情勢をふまえ,2022年11月の国際度量衡総会では,これまで±0.9秒だった二つの時間のずれの許容値を,2035年までに大幅に広げることが決まっていたのである。これは,実質的なうるう秒廃止を意味する。
今後数世紀は協定世界時に調整が入らない
今回の国際度量衡総会で決定したことは,廃止したうるう秒の代わりに「うるう時」ともいえるしくみを導入することである。すでに確定していたうるう秒の廃止時期が前倒しされたような形だ。うるう時とは,TAIとUT1の二つの時刻のずれを1時間(3600秒)まで許容するというものだ。これによって,今後少なくとも数百年は時刻を調整する必要がなくなるという。なお,総会において「うるう時」という言葉は使われていない。
地球などの天体運動の周期は厳密には一定でない以上,暦をどのようにさだめても,必ず“ずれ”は生じる。要するに,私たちの生活の利便性という点で,そのずれをどこまで許容できるかということだ。UTCが数世紀にわたって長く連続的にそのまま使用できることを目的としている。
国際度量衡総会では,秒の定義についても議論されている。その有力候補が,セシウム原子時計の1000倍も高い精度で時間を求めることができる「光格子時計」という技術である。今回の総会では,引き続き2030年の秒の再定義に向けて合意をめざすことなども決議されている。時間そのものの厳密さは,さらに高くなるのである。
執筆:荒舩良孝