Newton9月号増刊 半導体の未来
※本記事は,2025年8月に刊行された臨時増刊「半導体の未来」を再編集したものです。内容は刊行当時の情報に基づきます。
リソグラフィ装置では世界シェア約90%
Newton(以下,N):東京エレクトロンは何をつくっている会社ですか?
早川:半導体をつくるために必要な製造装置をつくっています。とくに前工程で使われる装置を多く取りそろえています。具体的には,シリコンウエハの上に薄い膜をつくる「成膜」の装置や,膜に感光剤(フォトレジスト)を塗り,紫外線を当てて回路のパターンを転写してから不要な薬剤を除去する「リソグラフィ」の装置などをつくっています(下図参照)。

東京エレクトロンの製造装置ラインナップ
リソグラフィ装置については世界シェアの90%をもっており,なかでもEUV(極端紫外線)を使って微細な回路をつくるリソグラフィ装置では,ほぼ100%のシェアをもっています。ほかの前工程に関する装置も,多くが世界シェアの1位や2位を獲得しています。
N:それほど高いシェアを獲得できた理由は何ですか?
早川:ユーザーの企業がほしい機能や性能をそなえた装置を,早め早めに製品化できていることが理由の一つだと思います。当社では「4世代同時開発」といって,時間にして10年先,世代としては4世代先の半導体構造を見こした装置の開発を行っています。
もう一つは「信頼性」ですね。ひと口に信頼性といっても,いろんな要素が含まれます。求められる性能の半導体を,装置がこわれることなく安定的に生産できることは大前提です。加えて省エネ性能や,人体に有害な半導体材料でも安全に取りあつかえることなど,そういったもろもろを含めた信頼性の高さが支持されている理由だと思います。
N:前工程の広い範囲をカバーしているんですね。
早川:当社は,成膜からリソグラフィ,エッチング(不要なシリコンなどをけずりとる工程),洗浄(不要な薬剤などを洗い流す工程)という,前工程でかぎとなる主要な工程の装置をすべて取りそろえている,世界でも数少ない会社の一つです。ユーザーに対して,幅広い工程を理解している当社ならではの提案ができるのは強みですね。たとえば,エッチングの工程でけずりすぎると次の洗浄で問題が生じるから弱めにしておいたほうがいい,といった前後の工程を理解したうえでの提案ができます。
N:前工程だけでなく,後工程の装置もつくっているんですね?
早川:半導体の性能を上げるために,近年は後工程の重要性が増しています。たとえば後工程では,前工程でできたウエハ2枚をはり合わせたり(ウエハボンディング),ウエハから切り分けられた半導体チップを組み合わせて一つの製品としてまとめたり(チップレット)することで,半導体の性能を高めようとします。当社では,ウエハどうしを接着したり,はがしたりする装置などを販売しています。
執筆名:福田伊佐央