イクオハダカカメガイ。ダイバーの間では「イクオネ」という愛称で呼ばれている=関勝則さん撮影
「流氷の天使」として知られるクリオネ。世界で6種目となる新種を、日本の研究チームが論文に報告した。水中写真家の中村征夫(いくお)さん(81)の名にちなんで、ダイバーの間で「イクオネ」という愛称で呼ばれてきた種類だ。
中村さんが初めて「イクオネ」に出会ったのは1990年代。北海道・知床半島の海だった。
流氷が漂う知床半島・羅臼の海中=2024年2月27日、山本智之撮影
その日は、流氷の浮かぶ海に潜り、被写体になる生物を探していた。水深10メートルほどの海中で、2匹がペアになって漂っていた。
「なんてかわいらしい生き物なんだろう。そう思いましたね。完全に、魅了されました」
水中写真家の中村征夫さん=2026年9月9日午後2時48分、東京都世田谷区、山本智之撮影
北海道の海を代表するクリオネ類の「ハダカカメガイ」と違って、体の輪郭がふっくらと丸みを帯びている。
その写真は、中村さんが1995年に刊行した写真集『カムイの海』(朝日新聞社)の表紙を飾った。
中村征夫さんの写真集『カムイの海』=山本智之撮影
同じく水中写真家で、知床の海で現地ガイドをつとめる関勝則さん(72)らが、中村さんの名にちなんで「イクオネ」と呼ぶようになった。
「自分の名前がつくなんて、おこがましい。最初のうちは抵抗感がありましたよ」と中村さん。その後、ダイバーの間で「イクオネ」という愛称が広まっていった。
「照れくさいけど、この生き物のニックネームとして、ずいぶん浸透してしまいましたね」
図鑑などに掲載される正式な和名も、中村さんの名を冠して「イクオハダカカメガイ」となった。ただ、これまでは分類学上、クリオネ類とは別のグループに位置づけられていた。その理由とされたのが、体の構造の違いだ。
クリオネ類は、エサを捕まえる…