Newton 別冊 トップ・サイエンティスト 世界の24人
2026年のノーベル生理学・医学賞は,アメリカ・スタンフォード大学のカール・ダイセロス教授,ドイツ・フンボルト大学のペーター・ヘーゲマン教授,ドイツ・ビュルツブルク大学のゲオルク・ナーゲル教授の3名が受賞しました。授賞理由は「光で脳を操作するオプトジェネティクス(光遺伝学)に大きく貢献したこと」によるものです。Newtonでは2015年8月刊行の別冊「トップ・サイエンティスト 世界の24人」でダイセロス氏のインタビュー記事を掲載し,オプトジェネティクスのしくみにせまりました(※インタビューは2014年11月におこなわれたものです)。
脳のしくみを明らかにする
近年,「オプトジェネティクス(光遺伝学)」と「CLARITY(透明化)」という二つの画期的な技術によって,脳の神経回路と脳機能の関係や,遺伝子と動物の行動の関係が急速に明らかになりつつあります。これらの技術を発明したのは,精神科医であり神経科学者,生命工学者でもあるカール・ダイセロス博士です。
「オプトジェネティクス」は,遺伝子を操作し,光を脳の神経細胞(ニューロン)に当てることで,ニューロンの活動のオンとオフを切り替える技術です。この技術を使って,マウスなどの動物の行動を変えることができることがわかっています。オプトジェネティクスの技術によって脳内の神経回路を読み解くことで,自閉症,統合失調症,うつ病,不安障害,パーキンソン病などの原因の解明や治療に生かすことができます。オプトジェネティクスは,2007年にアメリカの隔月誌『MIT Technology Review』で「年間最優秀技術トップ10」の1つに選ばれました。また2010年には,イギリスの学術誌『Nature Methods』で「メソッド・オブ・ザ・イヤー」に選ばれています。
ダイセロス博士に,オプトジェネティクスやCLARITYの技術や,それが明らかにしたこと,治療の可能性,そしてご自身の研究に対する思いについてうかがいました。
カール・ダイセロス Karl Deisseroth スタンフォード大学の生命工学および精神医学・行動科学教授(D・Hチェン財団)。ハワード・ヒューズ医学研究所の研究員。1971年11月18日,アメリカ,マサチューセッツ州ボストン生まれ。ダイセロス博士は,慶應医学賞(2014年),リュリー生物医学賞(2015年)など,数々の賞や栄誉を受け,アメリカ科学アカデミーとアメリカ医学研究所のメンバーにも選任されている。2008年には,アメリカの月刊誌『Popular Science』で「10人の天才」科学者の1人に選ばれた(小島真也/Newton Press)