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脳に光をピカッと当てて,目的の細胞だけをコントロールする。そんな SFのような技術が生命科学の実験で現実のものとなり,すでに医学や薬学の研究への応用が進んでいる。この技術は「オプトジェネティクス(光遺伝学)」とよばれ,2010年にイギリスの学術誌『Nature Methods』で「メソッド(手法)・オブ・ザ・イヤー」に選ばれている。また,2014年には,この技術を使った研究がアメリカの学術誌『Science』で「ブレイクスルー(躍進/突破口)・オブ・ザ・イヤー」に選定された。この革命的な光のテクノロジーのしくみを解説しよう。

協力 田中謙二 慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 情動の制御と治療学研究寄附講座 特任准教授
※ご協力者の肩書きは2015年9月時点のものです。

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「オプトジェネティクス」を使った実験のイメージ。マウスの頭蓋骨の表面に,光ファイバーと,それを支持するチューブを埋めこんでいる。頭部のオレンジ色の部分は,支持チューブがはずれてしまわないように固めたセメントである。このマウスに光を当てる実験を行うことで,神経回路と行動の関係を直接的に調べることができ,ひいては精神疾患の原因の解明や治療法の開発にもつながると期待されている(イラストNewton Press,資料写真:慶應義塾大学医学部 田中謙二)。

6月18日,理化学研究所は,うつ病に似た症状をもつマウス(小型のネズミ)に楽しいできごとの記憶を人工的によびおこすことで,うつ病に似た症状を改善できたと発表した。この研究チームは 2014年にも,マウスの楽しいできごとの記憶と,嫌なできごとの記憶を書きかえることにも成功している※1。うつ病や記憶のメカニズムを解明するうえで注目されている成果だ。

これらの研究では,脳にある神経細胞を直接コントロールして,外部から記憶を操作している。神経細胞を操作するために使ったのは,なんと「光」だ。つまり,光を使って記憶をよびおこしているのだ。

実験に使われたマウスは,実は普通のマウスではない。別の生物の遺伝子を導入して,光に反応するタンパク質を神経細胞でつくらせている。光を当てて,神経細胞を直接コントロールできるようにくふうしたものだ(詳細な原理はあとで紹介する)。

この手法は,「オプトジェネティクス」とよばれている。オプト(opto)は英語で「光の」,ジェネティクス(genetics)は「遺伝学」を意味する。そのため,オプトジェネティクスは「光遺伝学」ともよばれる。動物の遺伝子を改変する遺伝学と,その動物を光で操作する光学を組み合わせた言葉である。

※1:この研究成果が,2014 年にアメリカの学術誌『Science』で「ブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー」に選定された。研究の詳細については Newton 2014 年 11 月号 FOCUS「嫌な記憶を楽しい記憶に書きかえる」で紹介している。

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