ニュートン別冊「Nyaton」増補版 ネコの科学
※本記事は,2026年2月刊行「Newton別冊 Nyaton増補版 ネコの科学」を再編集したものです。内容は刊行当時の情報に基づきます。
マタタビを与えるとネコは幸せを感じる
ネコにはさまざまな言い伝えや,ことわざがあります。たとえば「猫に木天蓼(マタタビ) 女郎に小判」は,大好物のたとえや,あたえると効果が大きなもののたとえに使われることわざです。
ネコにマタタビをあたえると,なめたりかんだり,顔や体をすりつけたり,地面にころがったりします。この酔ったような行動をとることは,マタタビ反応として古くから知られていました。この行動は従来,マタタビに含まれるマタタビラクトンとよばれる複数の化合物に,ネコが陶酔しているだけだと考えられていました。
しかし近年,岩手大学の宮崎雅雄教授と名古屋大学の西川俊夫教授らの研究グループは,マタタビ反応をおこす主要な原因物質である「ネペタラクトール」というイリドイド化合物の一種を新たに発見しました。マタタビに反応しているときのネコは,ヒトでは多幸感にかかわるオピオイド系が活性化していることもわかりました。つまりマタタビ反応をしているネコは,見た目のとおりに幸せをあじわっていると考えられるのです。
研究グループはイリドイドに蚊の忌避効果があることもあきらかにし,顔や体にマタタビをすりつけたネコは,蚊に刺されにくくなることを報告しています。またネコがなめたりかんだりすることで葉が傷つき,イリドイド(ネペタラクトールとマタタビラクトン類)の組成比が変わり,放出量もふえて,防虫効果が高まることもわかりました。ネコのマタタビ反応には,合理的な理由があったのです。
監修名:宮崎雅雄
岩手大学応用生物化学科分子生態機能学研究室教授
執筆名:ニュートン編集部